ゼロからはじめる声優ロードマップ ~6ヶ月の基礎、2年の応用、そして10年の飛躍へ~1-1
- 駆動良
- 4月10日
- 読了時間: 5分
第1章:声優という職業のリアル
はじめに
「声優=アニメの人」「キャラクターの声だけを担当する職業」というイメージをもっている方は多いかもしれません。たしかに、声優の活動の中心はアニメやゲーム、吹き替えといった“映像・音声作品”でのキャラクター演技です。しかし、現代の声優は単に“声を当てる俳優”にとどまらず、より総合的なエンターテイナーとしての要素が求められるケースが増えています。
アニメや映画の吹き替えはもちろん、ナレーションやボイスドラマ、Vtuberやネット配信など、活躍のフィールドは広大です。同時に、舞台俳優や映像俳優以上に「声のみで表現する特殊スキル」が求められるという側面もあり、職業としての奥深さ・難易度はそう簡単ではありません。
今回のブログ連載では、そんな声優という仕事を、「俳優以上に求められる声だけの表現力」という切り口で深掘りし、初心者が始める際に理解しておくべき重要ポイントを解説していきます。
1-1. 声優=声の俳優、しかし求められる役割は俳優以上
声の俳優? 実際にはそれ以上
多くの人が「声優って、俳優の声版でしょ?」と考えがちですが、実はそれだけでは不十分です。舞台俳優や映画俳優は、身体全体・表情・動作など視覚に訴える要素をフルに使い、観客や視聴者にキャラクターや感情を伝えます。一方で、声優の場合は、マイクの前に立つ(あるいは座る)だけで、視覚的な訴求手段が限られています。

舞台・映像俳優との比較
舞台俳優 ・客席から見える身体の動きや表情 ・舞台装置・照明など視覚的演出の効果 ・声量や発声法で会場全体に響かせる
映像俳優 ・カメラワークや表情のアップで視聴者の感情を揺さぶる ・台詞の間や一瞬の表情変化でも細かく演技を伝えられる
声優 ・カメラもなく、身体の動きが直接画面には映らない ・「声」という要素のみ で喜怒哀楽や緊張感、シリアスさを表現 ・身体で示す動作を声質・息遣い・抑揚・間などに集約
ここからも分かるように、声だけで視聴者やプレイヤーをキャラクターの世界観へ引き込むという点で、声優は“俳優”の範疇を超えた難しさを抱えています。
声だけで感情を作り上げる
声優は、キャラクターの表情や動きを自分で演じるわけではありません。アニメなら原画や映像、ゲームならCGモデルや立ち絵があり、それに合わせてセリフを当て込むことが基本です。では、どんなところに演技のポイントがあるのか?
息遣い・ブレスのコントロール
キャラが走るシーン→自然な息切れを声で作る
恐怖で震えているシーン→呼吸音や息の揺れが必須
声の高さ・強さ・速度の微調整
同じ言葉でも、張り上げた声で言うか、囁くように言うかで印象が激変
アニメ特有の“テンポ感”に合わせ、早口で畳み掛ける演出も少なくない
感情と台詞の裏にある心理の表現
「本当は好きだけど素直になれない」→ 音程を微妙に落とす、語尾を濁すなどの工夫
「敵意を剥き出しにしたい」→ 声に力を込め、息の量を増やす、息継ぎを荒くする
俳優であれば身体を使った演技で自然と出せる要素も、声優ではすべて「音声の表現」に凝縮します。言い方を変えれば、舞台俳優や映像俳優が身体で生み出す“エモーション”を、声優は“声”に集約して演じる必要があるのです。
声だけで世界を描く責任感
アニメやゲームの場合、視聴者やプレイヤーはキャラの動きや表情をある程度視覚的に捉えられますが、それでも声が演技に乏しいとキャラクターが一気に“平坦”になってしまいます。特に、ラジオドラマや一部のゲーム音声では、声だけが唯一の情報源となる場面も多いです。
たとえば、シリアスな展開のラジオドラマで「この後、主人公が重大な決断をする」シーンがあるとします。その緊張感、主人公の葛藤、周囲の期待や不安など、すべてを声の演出でリスナーに伝えなくてはなりません。そこには俳優以上の情報量が要求されるとも言えます。
場面転換:BGMやSE(効果音)もあるとはいえ、声優が“空気”を変える
複数キャラの掛け合い:声だけで人間関係や温度差を描く
心理描写:ト書きがない分、声の微妙な抑揚やブレスで読者へ訴えかける
これらはまさに、声優が「俳優以上」の難しさを抱える 例でもあります。
声優はマルチな才能が求められる時代へ
近年では、声優はアニメやゲームだけでなく、歌手デビュー、舞台出演、Vtuber化、SNS配信などを行うケースが急増しています。“声の俳優”であるだけにとどまらず、マルチに才能を発揮する総合エンターテイナーの時代とも言えるでしょう。
歌唱力:キャラソンや音楽ユニットなど
トーク力:ラジオ番組やイベント司会、YouTube配信
企画力・セルフプロデュース力:ファンとの交流企画、グッズ展開、SNSブランディング
つまり、声優を目指すなら、ただ「演技がうまい」「声が良い」だけでは厳しく、幅広いスキル が求められます。裏を返せば、それだけ活躍のチャンスが多いとも言えます。アニメ・ゲームにとどまらず、多方面で羽ばたけるポテンシャルを秘めているのが現代声優の魅力です。
まとめ:声の俳優を超える存在としての声優
今回のブログ(第1章 1-1)では、声優が俳優と同様、あるいはそれ以上の表現を担う仕事である点を紹介しました。
ポイント1:舞台・映像俳優以上に声の表現力が必須
ポイント2:息遣いや声の強弱・トーンで複雑な感情を伝える
ポイント3:ラジオドラマやゲームなど、声だけが情報源となる作品も多数
ポイント4:マルチな才能(歌、トーク、セルフプロデュース)も求められる時代
次回は、こうした声優の特殊性を踏まえて、「基礎練習がいかに重要なのか」 を深堀りしていきます。舞台や映像俳優が身体を駆使するのと同様に、声優も身体的練習や感情表現の訓練を地道に重ねているのです。ぜひ次回もお楽しみに!
参考資料
『声優の基礎力:次世代のための発声&表現術』 日本アクターズ出版, 2019年.
『現代声優総覧:声と演技の融合』 声優振興協会編, 2021年.
『舞台と声の交点:役者が学ぶ表現領域』 俳優養成研究所編, 2020年.
『声と身体:表現者のための発声学入門』 発声研究会, 2018年.
『ラジオドラマ脚本術:音だけで描く物語』 メディア音声研究所, 2017年.
『声優ビジネスの最前線:メディアミックス時代のスター育成』 業界総合出版社, 2020年.
(連載:第1章 1-2へ続く)
※あくまで私見であり一側面について語っております。
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